寿命予測を説明する前に
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アレニウスの式
プラスチックの寿命予測を論じる時、広く用いられている化学反応速度と温度の指数関係を示すアレニウス(Arrhenius)の法則が成立します。つまり、プラスチックの分解速度はその温度によって指数関数的に早まる傾向を示します。反応速度=定数 × e (-Q/RT のべき乗)
Qは活性化エネルギー(cal/mol)
Rは気体定数(1.98cal/mol・°K)
Tは絶対温度(°K)比較的分解が進みやすい高温領域で促進テストを何点か行い、これらの結果を対数グラフ上にプロットすることにより、常温領域での分解速度を類推することが可能です。但し、この数式が成立する絶対条件は、高温領域での分解のメカニズムが常温でのそれと同じでなければなりません。(同じ定数や活性化エネルギーの数値を用いている為)
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抗張積
これも聞きなれない言葉ですが、破断強度と破断時の伸びを掛けたものを抗張積と呼びます。エラストマーの性能を評価する際には、一つの目安として使えます。
具体的には、劣化が進むとカチカチに硬くなり破断強度が上昇する場合でも、極端に伸びが落ちますので抗張積で見る方が、単に破断強度で見るよりは現実的です。TPUの場合、この抗張積が絶対値で 40,000 が TPU としての性能を保持していると言う限界の目安になります。 この根拠は 引張破断強度 200kgf で引張破断伸び 200%レベルを想定しています。200kgfx200%=40,000
加水分解
ウレタンと聞いただけですぐ加水分解が頭に浮かぶ方は相当樹脂について精通されていますが、実際には TPU のウレタン結合自身が他のポリエステル樹脂のエステル結合同様に加水分解するよりも、TPU に含まれるソフトセグメントの長鎖ポリオールに含まれるエステル結合が加水分解すると理解した方が正確と言えます。
いずれにしても、この加水分解の挙動を確認するには、水中浸漬高温度下で加水分解を加速促進させ、そのアレニウスプロットから水中浸漬常温下での加水分解特性を類推します。-
注意
今まで説明してきました内容は、基本的にはアレニウスプロットによる純粋な熱力学的特性で単純化してあります。 ところが実際に TPU が使われるケースでは、より複雑な諸条件が複合的に影響しております。具体的な要素としては、カビや微生物、油、薬品や溶剤、紫外線等が挙げられます。特に、カビから発生するある種の酵素が TPU の分解触媒として働き、スキーブーツが破損した事例は当時新聞でも取り上げられ問題となりました。従って、エコ TPU のご使用に際しては、地中内埋設用途、温水中浸漬用途や浴槽内常時使用用途はお避け下さい。但し、通常のオフィスや家庭内での使用には何等支障は御座いません。
エコTPU90A水中浸漬テスト
抗張積40,000を基準値として、水中浸漬100°Cと80°Cの2点のアレニウスプロットから類推された値は30°C水中浸漬換算で14.2年分に相当します。
エコTPU90ANCサンシャイン・ウェザロメーターによる耐候性テスト
暴露時間 | 0時間(初期値) | 100時間 | 300時間 |
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硬度(JIS A) | 95 | 95 | 94 |
100%モジュラス(kgf/cm2) | 105 | 118 | 115 |
300%モジュラス(kgf/cm2) | 200 | 245 | 220 |
引張破断強度(kgf/cm2) | 450 | 420 | 410 |
破断伸び(%) | 500 | 390 | 380 |
JIS A1411
ブラックパネル温度 63°C
降雨サイクル 18 分/120 分(雨あり)
試験片厚み 2mm
これらの数値は実測値であり保証値ではありません。
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