成形収縮率とは
- 熱可塑性(加熱すると溶けて、冷やすと固まる)樹脂は、成形(形状を与える事)時は加熱溶融して液状のまま、金型に注入されます。
- 金型に充填された液状の樹脂を、今度は金型内で冷却して固めます。
- 固まった樹脂を、金型から取り出すと、樹脂成形品が出来上がります。
- その際、樹脂の成形収縮率が0ならば、成形品の寸法は、金型内寸(キャビテイー寸法)と同じになります。
- しかし、実際には成形収縮率が0と言うケースは稀で、通常、収縮によって小さい寸法に仕上がる為、金型キャビテイー寸法は、この収縮を見込んで、製品図面よりも大きくする必要が有ります。
- この見込む収縮の程度を成形収縮率と呼び、通常は%で表します。
- 実際に、金型を起こす時(製作時)に、この金型の収縮率データが無ければ金型は彫れません。
- しかも、この収縮率は、樹脂の種類、樹脂の分子量、金型の中での樹脂の流動方向、金型温度、成形品肉厚、成形条件、樹脂の強化剤や充填剤で異なり、物質固有の一定の値を示さない所が、嫌らしい挙動です。
樹脂の種類で異なる収縮の原理
[非晶性(アモルファス)樹脂の場合]
- 溶けている状態の温度と、冷却されて固まる状態までの温度変化×熱膨張係数がメイン
- 従って、成形収縮率は比較的小さく、1%以下が多い。
- 勿論、金型温度や充填状態の影響も出るが、結晶性樹脂と比較したら小さい。
- この為、光学レンズや精密成形品の成形には向いている。
- 非晶性樹脂の具体的な種類としては、ABS樹脂、ポリスチレン、ポリカーボ樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、変性PPO/PPE樹脂、等が挙げられる。
[結晶性樹脂の場合]
- 非晶性樹脂同様、温度変化に伴う熱膨張分は収縮するが、更に、結晶化に伴う大きな体積変化が支配的
- 従って、成形収縮率は大きく、数%となる。
- この結晶化は金型温度の影響を大きく受け、高温金型でゆっくりと冷却固化すると、結晶化度が高まり、より大きな成形収縮率を示す。
- 成形品肉厚が大きい場合も、同様に徐冷されるので収縮率は大きくなる。
- 結晶性樹脂の具体例は、PP、PE、ナイロン樹脂、POM、PBT樹脂等が挙げられる。
各種樹脂の成形収縮率例
樹脂の種類 | 6ナイロン | 66ナイロン | PC | POMコポリマー | POMホモポリマー |
---|---|---|---|---|---|
単位 | % | % | % | % | % |
特徴 | 低め結晶性 | 高め結晶性 | 非晶性 | 低め結晶性 | 高め結晶性 |
流動方向 | 1.2~1.4 | 1.3~1.7 | 0.5~0.7 | 1.9 | 2.2 |
垂直方向 | 1.4~1.6 | 1.6~2.0 | 0.5~0.7 | 1.9 | 2.4 |
*各社カタログから抜粋の為、保証値では有りません。
当たるも八卦、当たらぬも八卦の成形収縮率
- 材料メーカー各社のカタログを見ても、その成形収縮率のデータは、非常に大きな幅で示されている為、金型メーカーはそれらの数値の平均値で成形収縮率を取り敢えず小さめに設定せざるを得ない。(小さめならば、ずれた場合、更に金型削り方向で修正が可能となります。)
- 特に、成形収縮率の測定はASTM D955で規定されているが、3.2mmの肉厚での数値なので、実際の製品肉厚とは異なる。
- 材料メーカーの中には、意図的かどうか不明だが、敢えて流動方向と垂直方向の値を示さなかったり、極端に大きな幅で収縮率を示すメーカーもある。
- 一番確実な方法は、類似形状の成形品での実測に基づく、成形収縮率の設定が、最も正確。
- 個人的な経験でも、顧客から私が売り込みに成功したガラス繊維強化ナイロン樹脂の成形収縮率を金型作成時に求められ、厚肉成形品なので多少多めに予想したが、見事外れ。 アルミ勘合部品に組み付けられず、急遽、PPに変更して貰ったところ、ピッタリ寸法も収まり、おまけに強度もスペックをクリアーしてしまった。 結果、顧客からは、大変大きなコストダウン提案だと感謝されてしまった事が有ります。
ご注意
- ここで紹介させて頂いた収縮率のデータは当社製品を含め、各社カタログデータからの抜粋です。保証値では有りません。
- 今回の資料では、ガラス繊維強化、ミネラル強化、難燃グレードについては言及していません。これらのケースでは収縮の挙動が異なります。
- 当社製品を御採用の際に、各種グレードの収縮率データが必要な場合、必ず当社に事前御相談を御願いします。 経験豊富な当社テクニカルスタッフが対応させて頂きます。
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